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劇団Miss女子会 第二会公演 「男尊ジョリー」観て来ました [その他]

終わってから数日経って、そろそろみなさん感想を探さなくなるだろうから、こっそり書いておこうかな。
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劇団Miss女子会 第二会公演(回ではなく女子会の'会'にかけている)、「男尊ジョリー」観て来ました。

期間は2019年7月31日~8月4日、計9公演。
僕が観たのは、初回,2日昼,4日夜(最終回)の三回です。
1972年(昭和47年)…
激化していた日本の学生運動が下火になったその頃
人々はあさま山荘事件でテレビの前に釘づけになり、沖縄の日本返還に歓喜した…
そしてその5年後
日本で最初のガールズバンドが誕生した…
そんな青春時代を過ごした若者たちも今や70歳
2019年(令和元年)…
昭和で時が止まった様なとある部屋には
5つの錠が掛けられた古いトランクケース
そしてそこに集まる4人の若者たちの手には
母親から預かったという古い鍵が握られていた…

脚本 高橋達也
演出 高品雄基(TEAM-ODAC)

最初、学生運動の時代が関係するって聞いたとき、ちょっと不安だったんだ。

もちろん、僕自身は学生運動の時代より全然後の世代だけど、1972年は生まれていて薄っすら記憶もある。その上、あの時代に現役だった大人の影響を多分に受けていると思う。実際、中学や高校の教師に結構いたと記憶している。

あの時代って、視点や描き様によってはまるで違う話になる事があり、例えば、あさま山荘事件を機動隊側から描くのと活動家側から描くのではまるで異なる。

捉え方、扱い方によってはとんでもない話になる可能性だってあるのだ。

チケット予約しても、万が一もし本当に「ダメな感じ(ここで言ってるのは作品の良し悪しではなく、僕が受け入れられるかどうか、好みかどうかという意味)」なら、最悪初回だけしか行かないかも...なんてことまでちょっとだけ頭を過ぎった。


...まあ、例によって「自分の考えすぎ」で終わったんですけどね(^^;

-◇-

訳も分からず鍵を渡され、ある部屋に呼び出された女性三人(座安風子、兜麗音、巻石美玖)と、『誘拐されて』連れてこられた女性(上里アイコ)、それに部屋の住人の女性(岩巻未来)の計五人。

実は1970年代初めにメジャーデビュー目指し活動していた女性だけの『ガールズバンド』、「男尊ジョリー」(後述)のメンバーの孫や娘たちだったというところから始まる物語。


初日、観終えてからの最初の感想は「Miss女がやってくれた!」と大興奮だったんだ。それぐらい脚本も演出も、もちろん演技も良かったんです。


部屋に集められた女性たちで進む現代の話と、それぞれの祖母や母の物語が昭和の話。

舞台上では現代・昭和がほぼ交互に進行するけど、実際には昭和の話は8mmフィルムの内容や岩巻未来の口から語られる、いわば「再現映像」の様なイメージだ。ライティングもアンバー気味でレトロっぽくなり、昭和の話の間は基本的に、現代側の演者が舞台の周りに座って話を見聞きしている体で進むのがおしゃれだなと。

昭和側の登場人物は、「男尊ジョリー」のギタリスト(ゼリー・瀬里澤いずみ)、ベーシスト(リナ・佐藤りな)、ドラマー(アン・安藤杏子)そのアンが連れてくる負傷した学生運動活動家(佐々木キヨ)。ボーカルであるジョリーは、会話上に出てくるだけで、代わりにその妹の中学生(上里和子)がいる。

両時代の相関関係は、
アイコ - ジョリーの孫
美玖 - ゼリーの養子
風子 - りなの孫
麗音 - キヨの孫
未来 - 和子の娘
(ちなみに登場人物の名前は有名なミュージシャンや女優の捩りらしいです)

昭和側の時代は1972年。学生運動が衰退した頃を描くので、ベトナム戦争や非核三原則、沖縄返還に触れられているし、平和とは何か?という当時であれば今よりも多くの人が考えたであろう場面もある。

過激派の起こした事件の、あさま山荘事件や山岳ベース事件や一連の内ゲバを指すと思しき台詞。

太平洋戦争からは、実家は広島だが祖母、祖父が亡くなった理由を聞いた事がないというアンと、そのアン自身が被爆二世だったり。

現代側でも、アイコの状況や、麗音と美玖の台詞から今現在進行中のムーブメントや社会問題を連想させる表現もあった。

だからといって、話が重くなったりはせず、テーマを正面から扱いつつも、大上段からでもおしつけがましくもなく、それでいて伝えたいことを伝えていたと思う。



後半、昭和側での「キヨを誘拐したことにする」という展開はある意味コミカル。でも、その結果からメンバー達の怒りが爆発。自分達の将来のために行動を起こそうとした時にジョリーの妊娠という「現実」に引き戻される。それでも皆は「後の世代に」想いを託そうとする。それが、後の世代の騒動に繋がるのだが...

終盤、アンや「過激派の起こした事件の印象しか残らない時代だと思われるのは悲しい」という想いが未来に伝わっていると分かるシーンはグッと来ると同時に、「自分もそうだな」と考えさせられた。60年代安保、大学闘争も含め「失敗した世代」の印象を持っていたからだ。

まあ、その感動のあとに一騒動(いや二騒動?)あった上での大団円なんですけどね。



観た人や演者の中からも「難しい話」という声があった様だけど、個人的には難しいとは感じなかった。

というか、全編ほぼ自分にとって関心のある分野ばかりな上、台詞や動きに散りばめられた小ネタがいちいち実感を伴って理解できる(上げるとキリが無いけど、それぞれの時代パートの冒頭の「対になるギャグ」?やロッキーなどなど)ものばかりで、喜んじゃった方がが大きいかも。

更に当時の洋楽に詳しければ、完璧に楽しめたんじゃないだろうか。



「男尊ジョリー」という題名からは誰もが「男尊女卑」を連想すると思う。

ちなみに劇中のバンド名、本来は「ダンス オン ジョリー(Dance on Jolly)」。
これをキヨが「男尊ジョリー...女性ばかりのバンドなのに男尊女卑を捩った皮肉」と聞き違えて、でもその方が自分たちらしいと「男尊ジョリー」にしたことが命名の由来。脚本の高橋達也さんの空耳が先かダジャレが先か知らないが、「ああ...なるほど」と、もっとも腑に落ちた部分(笑)


-◇-

正直、気になった部分も無いではありません。現代側の前半(2019の②)での会話の落とし所とか、活動家なら「戦艦」ではなく「軍艦」って言うだろうなとか、アメリカと戦っていたのは正確には「北ベトナム」だとか。

でも、そんなことよりも、今、若い女性だけの劇団Miss女子会でこの話を観ることができた事の方が嬉しくて、良かったと思ってます。

社会問題や反戦・平和を正面に据えつつ、ちょっと語弊があるかもしれないけど、熱くてスマートでおしゃれで、コミカルな場面もあり、Miss女が演じることでニヤリとできる意味を持つ様な箇所もある、というお芝居だったと自分なりの総括です。

加えて、両世代とも、良くも悪くも男社会を突っ走っている女性たちが、時代を超えて二世代(実は間の世代が絡んで三世代だったのだが)が繋がった「ヒューマンドラマ」だったとも。


-◇-

Miss女子会の舞台を見るのは二回目。初回の「アイシャドウ」の時は、碧乃美月さん以外あまり良く知らなかったのですが、今回は出演したメンバーのみなさんを「全員知ってる」状態。前回と見方がまるで違ってしまいました。

その上で観ていて思ったことを、思いついたままに書いておこうと思いますが、レビューではなく単なる感想なのであしからず。

なお、役者なんだから素の本人と違うは当然で、役と本人を重ね合わせて語るのは違うという指摘もあるでしょう。しかしある種の特性からオーダーされるのも個性だと思うので、その辺は考慮せずに綴っておきます。

昭和組
  • 伊藤雨音(安藤杏子)
    実は初回観た時いちばん印象に残ったのが彼女。普段の彼女とかけ離れていたり(笑)役どころが良いのもあるけど、それでもこういう演技も出来るんだと感心した。思わず「『(雨音さんに)色が無い』分、技量次第でどんな役も自然に演じられるんじゃないか」なんてDMしちゃったけど、失礼な事言っちゃったな...。

  • 宮瀬いと(瀬里澤いず美)
    このひとはある意味でズルい。彼女は容姿端麗ゆえに佇まいがそれだけで画になるので、舞台上に居るだけで目を引いてしまう。台詞回しや役柄的にもクールで、でも熱いところもあるゼリーをそのまま演じていた。とにかくカッコイイ!

  • 木村佳奈枝(佐藤りな)
    5月に加入したばかりの新メンバーだけど、皆が言うように僕も彼女が居なければ「男尊ジョリー」は成り立たなかったと思う。 役柄的にも「ズルい」ひとのひとり。風子と対を成す常に能天気でテンション高めは佳奈枝さんそのものを思わせるけど、終盤、和子を気遣って言う台詞が来るものがあった。

  • 碧乃美月(佐々木キヨ)
    今回もお嬢様属性を遺憾無く発揮...って言うと本人に怒られるかも。そして今回も早口で長く難解な台詞をこなしている。 本人の雰囲気も適役だと思うけど、その本人にミステリアスな部分があるので、まだまだ別の可能性もあると思う。 僕は彼女の舞台を今回含めて三回見ているので、確実に経験値を重ねていることを確認できる唯一のメンバー。

  • みらい(上里和子)
    会うと「(ちいさな声で)どーもー」みたいな感じなのに(^^、今回は、ほぼ怒って怒鳴ってる、がんばっていたひとり。ゴーゴー風(?)ダンスも笑えた。 あまりの違いに、第一声の時、みらいちゃんだと判っているし、演じている人物をちゃんと見ている筈のに「誰だコレ?」と思うぐらいだった。 神谷実玖さん演ずる岩巻未来の母親になるけど、「アイシャドウ」の時と親子関係が逆転しているのがおもしろい。

現代組
  • 北条愛実 (上里アイコ)
    このひとも「この役にぴったり」なんて書くと怒られるかも。でもこの手の迫力が必要な役をやらせたら、メンバー内で右に出るものはいないでしょう(本人も認めるコメントをしている)。冒頭、手錠,足錠(足枷)して突っ伏している姿はインパクト十分。当たり前だけど素は違いますよ。アッパーやストレートをかますことはありません。多分。

  • 野口紗世子 (巻石美玖)
    頭脳明晰、クールアンドビューティーな美玖役にぴったり。登場人物中ではもっとも大人な感じがしたひと。血縁ではないがゼリーの娘としてクールな面とミュージシャンとしてキャラクターを継承する。 でも素の紗世子さんはどちらかというとおちゃめな感じもするので、てことは、役を演じきったってことでもあるのか。

  • なりみ(座安風子)
    いちばん「ズルい」ひと(笑)。普段のなりみさんをブーストした様な感じの役だもの(ブーストなしでも可との声も)。コミカルなシーンも熱演。 物語は彼女の第一声からはじまり、暗い舞台の客席側から登場する。ブートアップとしては最適のひとだと思った。

  • 流矢聖子(兜麗音)
    一見すると地味な感じだし、普段の「しょっぴぃ」と違った役かなとも感じたけど、彼女のまじめな部分を突き詰めてゆくと麗音になるのかもしれないと。アンチフェミニズム的な言動も多い現代組の中で唯一の良心?。劇中の人物で一番好きなのは麗音さんかな、と思えたのは聖子さんの力。

  • 神谷実玖(岩巻未来)
    我らが座長、リーダー、団長、おかん。とにかく舞台上の安定感が半端無い。演技も観ていて安心できる。 全編通してある意味主役であり(もし劇でなければ昭和のパートは未来の独演会ということになる)、ストーリーテラー的な役回りでもあり大変だったんじゃないだろうか。実玖さんがそのまま出ている錯覚もするくらいの適役。39歳役でも違和感無い

アフタートーク
  • 岡崎ちなみ
    兼任のアイドル活動(DREAMING MONSTER)が多忙のため、今回は参加できず最終日のアフタートークのみに登場。でも実は劇中で流れるラジオのアナウンスをしていたと知ってびっくり。ちなみに、僕はラジオの「しばらくお待ちください」を実際に3~4回聴いたことがある。


千秋楽夜公演は最後ということもあってか、みんな気持ちが入っていたと思うけど、特に雨音さんと神谷実玖さん感情乗せ過ぎ!こっちも来ちゃうじゃないか(笑)。

涙腺が緩いといえば、実は初日の冒頭すぐでちょっと来てるんだ。まだ舞台上でおならがどうこう言っている段階で(笑)

観ながらふと、やっぱりMiss女子会のメンバーは、やっぱり舞台の上が本来の姿なんだと思っちゃたら、ちょっとね(^^。

まだ八ヶ月だけど、Miss女応援していて良かった。

(了)
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